「結局さ、老後のお金だって、『自己責任』なんじゃない?会社だって政府だってあてにならなくってさ」

あまりにも的を射た娘の言葉に、浦田勝昭は思わず箸を止めて、真剣に考え始めた。

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勝昭が娘の美紀子と投資の話を始めたのは、ある日の夕食のことだった。美紀子が投資を始めたのは、もう2、3年前だろうか。30歳にもなってまだ実家に住んでいる「すねかじり」の身でナマイキな、と思いつつ黙認していたが、それでもそこそこに儲けは出しているらしく、厳しくとがめることはしていない。

とはいえ、せっかくの夕食の席で、「今年はけっこう調子が良かったから、儲けも出ちゃった」、「あら、じゃあ、私も少しやってみようかしら」、という母娘の会話を聞いているうちに、これは一言釘を指しておかなければ、という気持ちになってきたのだ。

「ミキもいろいろ投資を勉強してやってるようだけど、あまり過信しちゃいけないよ」

『釘を差す』というほど言葉に勢いがないのは、勝昭にとってこの末の娘はそれこそ目の中に入れても痛くないほどかわいい存在だからだ。もっとも、だからこそ、しっかりとした考えを身につけて欲しいわけだが…

「お金って言うのは、なんだかんだ言っても、やはり額に汗して稼ぐのが一番だからね。投資をするな、とは言わないけど、あくまでも遊びの範囲内でやりなさい」

諭すように言う勝昭に、美紀子が目だけで笑いながら素直に返事をする。

「わかってますって。そんな危ないことはしてないから、心配しないで」

うむ、と、威厳を保ってうなずく勝昭だったが、その後に続く美紀子の言葉は、予想もしないものだった。

「でもね、お父さんだって、意外と投資と無関係ではいられないかもよ?」

ん?と目を向ける勝昭に、どきりとするぐらい真剣な表情で美紀子がつづける。「ほら、お父さんの会社でも、企業年金とか、問題になっているじゃない?」

それはまさしく、美紀子の指摘するとおりだった。勝昭の勤務先は、日本でも有数のマンモス企業で、よもや倒産することはないのだろうが、最近は業績の悪化にともない、リストラの噂が社内でもかまびすしい。しかも、リストラは現役世代だけにとどまらずOB世代にも飛び火して、退職者に支払う企業年金の額を減額する措置も検討されていた。もちろん、会社からの年金をアテにしていたOB世代の反発は言うまでもなく、ついにはOBが会社に対して訴訟を起こすという前代未聞の事態になっていた。

2年後に定年を控えた勝昭にとっても他人ごとではなく、興味津々で訴訟の行方を見守っている。

「最近は、イヤな言葉だけど、『長生きリスク』なんて言われるぐらいだから、老後の資金をどう確保するかは、大事みたいよ」

勝昭の思いを察したように、美紀子が言葉を継ぐ。

「結局さ、老後のお金だって、『自己責任』なんじゃない?会社だって政府だってあてにならなくってさ」

そうは言っても、実際にどうしたら良いのか…。それこそ、お金は額に汗して働くものだ、と過去30年間信じてきた勝昭は、戸惑いを隠せなかった。
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美紀子さんの解説する、「老後の不安をなくすために」、「原則に則って」、「経済のことがもっと分かるようになる」、投資方法、詳細は、「これなら買える!投資信託〜物語で学ぶ、賢い投信の選び方」 [2]で。

[1] http://www.money-college.org/blog/contents/souken/korenara/hitaini_b
[2] http://www.amazon.co.jp/gp/product/4478003033?ie=UTF8&tag=mcpromo-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4478003033