米国における金融教育の現状を確かめるために、1週間ほど視察旅行に行ってきたので、今日から何回かに分けてご報告します。
まず第1回目の今日は、ICI(Investment Company Institute)という団体の年次総会(General Membership Meeting)のレポートです。
今年の年次総会は、2006年5月17日(水)から19日(金)まで、Washington DCにあるHiltonホテルで行われました。NASD(※)のトップ、Mr.Robert R. Glauber (ロバート・グラバー)のキーノート・スピーチは、2003年から2004年にかけて米国を揺るがせたミューチュアル・ファンド・スキャンダルを受けて、米ミューチュアル・ファンド業界にこれから求められるもの、これから課せられる規制、などについて話がおよびました。
投資教育、という観点からは、適切な教育を受けた個人投資家こそが適切な市場、もしくは、違法な取引を排除する、最前線である(\”front line\”という表現をしていた)であるとの立場をとり、適切な投資教育が必要との前提をおいているわけです(誰がその担い手になるかについては触れられませんでした)。
そのうえで、ミューチュアル・ファンドという観点において、これまで以上の情報開示(disclosure)が求められるだろう、というのがスピーチの趣旨です。
SECの主導により、販売時情報開示規制(\”point-of-sale disclosure requirement\”)が強められ、就中手数料内訳(運用会社から販売会社に支払われるリベート等)の開示が求められているが、スピーチにおいては、これにとどまることなく、運用戦略、ねらい、パフォーマンス、そしてリスクの開示を積極的に行っていくべきである、との姿勢をとっているのです。
一概に比較できないとはいえ、自主規制団体にこれまでの規模と権限を与えているアメリカ市場というのは、懐が深いな、と感じました。何というか、情報開示にせよ自主規制にせよ、やるべきことはトコトンやっていこう、という姿勢には、市場主義の牙城たるアメリカのプライドすら感じました。
※National Association of Securities Dealersの略で、日本語で言うと全米証券業協会。証券業界の自主規制機関で、証券会社などへの免許交付から、監視、業法に違反した際の罰則の適用など、広範な権限を持つ。2006年5月現在で、2,000人を超えるスタッフ、$500million (600億円)を超える予算を持つ巨大組織でもある。