「1勝9敗」
と聞いて、「お、ユニクロの柳井社長?最近調子いいもんなぁ」と連想が働いた方、鋭いですね。たしかにこんなタイトルのご著書があります。が、今回は投資の話。個別株はリスクが高いけど、儲けている人はこの、「一勝九敗」、なんだそうです。つまり、
「自分が買った10社の株のうち、9社は値を下げても良い、残りの1社で大きく儲けられれば」
と、考えているそうなのです。儲けられる人は。
そして、そのために大事なテクニックが「損切り」。つまり、たとえば買った値段から15%株価が下落したら、たとえ損失を出しても良いから株を売ってしまおう、と損失の最大幅を決めておくもの。言葉を換えれば、「投資で儲けられる人は、損切りができる人」と言っても良いでしょう。
でもこれ、実際のところはなかなか難しいんです。ひょっとしたら最近のキツイ下げ相場で経験した人もいるかもしれませんが、株価が下がった時にも、「もうちょっと我慢したら反転して儲けが出るんじゃないかな、いや、せめて元の値段まで戻してくれれば…」といつまでもずるずると引っぱってしまって……結局のところは傷口を大きくしてしまいます。結果として、同じ一勝九敗でも、大きく負け越してしまう、というのが初心者にありがちなパターン。
実はこれ、人間の心理としてどうしようもないところ。だってほら、他の分野でも似たような経験ありませんか? たとえば男女の仲だって、付き合い続けても良いことないと分かっていながらズルズルと腐れ縁を引っぱってしまうことってよくあること。ことほどさように、「一度下した判断を自分の手で覆す」ことは人間には難しい。投資初心者が陥りがちなワナを「大罪」と言うキーワードでまとめたこの連載の中でも、第8の大罪、「損切りできない」はかなり重いものなのです。
じゃあ、どうしたら良いのさ?というのを、先ほどの男女の仲の例で考えてみましょう。ヒントは「婚前契約書」。日本ではあまりなじみがありませんが、米国ではよくあるらしい、「万が一離婚する際には、妻に資産の半分を譲ること」などの条件を結婚する時に決めておくものです。
この、「結婚する時に」決めておくと言うのが重要で、このときにはお互いにハッピーなので冷静かつフェアーな判断ができるので、いざ分かれる時にもスッパリと断ち切って新たな一歩を踏み出せます。
これを投資に応用すると?そう、カンのいい人は気づいているかもしれませんが、株の買い注文が成立したその時に、売り注文も出してしまうのです。「逆指し値」とか、「ストップロスオーダー」とか言いますが、たとえば1株1000円で株を買ったら、「800円になったら自動的に売ってしまう」という注文を仕込んでおくのです。
これならば、いつまでも引きずることなしに、すっぱり損切りできますね。
ということで、第8回のまとめ。
投資初心者第8の大罪:損切りできない
大罪を浄化する魂の救済:ストップロス・オーダーで機械的に売る
ん? 「9敗」はわかったけど、「1勝」はどうすんだっけ? と言う人は、待て、次号。「1勝」を伸ばす面白いテクニックを紹介します。