●マネー体験ストーリー
−「もう投資なんてコリゴリだよ」
岩本琢郎は、自宅のコンピュータの画面を見ながら、(もう投資なんてコリゴリだよ)と心の中で繰り返していた。

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琢郎は、中堅の貿易会社、東西交易に勤務するサラリーマンである。「仕事人間」とまでは言わないまでも、入社以来仕事に邁進してきた琢郎が株式投資をはじめたのは、2年前に課長に昇進したことがキッカケだった。40才で課長に昇進、というのは、東西交易の中では遅くもなく、早くもなく、と言ったところで、まずはめでたいことではあったのだが、管理職への昇進にともなって残業代が一切出なくなったのは痛かった。毎月のお小遣いのアップも妻にも言い出せないまま、それならば、と、副収入を求めて投資を始めたのだ。

素質があった、とでも言うべきか、もともとマメなところに加え、親しい友人からは名前をもじった「タフ郎」というあだ名をもらうほどに我慢強い琢郎の性格は、株式投資に向いているようだった。初めて買った株で3ヶ月もたたないうちに20万円ほどの利益を得て、投資経験2年の今ではすっかり1人前の投資家となっていた。

といって、デイトレーダーのようなマネはしない。あくまでも、副収入は副収入で、自分の本分はわきまえている。投資は自分が管理できる範囲で、一度に持つ銘柄はせいぜい5−6本、400万円前後と言ったところだろう。

そんな琢郎が、「これは!」と、株式会社バリュープライムに目をつけたのは、3ヶ月ほど前のことだった。たまたま目にした、経済新聞のベタ記事で取り上げられていた、中堅企業向けにグローバル調達をアウトソーシングするというサービスは、購買部門に長らく勤務した琢郎から見ても、良い目の付け所だった。

しかも、PERから見て株価は割安だ。これまでの経験から、バリュー株を見つけて数ヶ月間値上がりを待つ、という投資スタイルを確立していた琢郎の目から見て、この銘柄は間違いなく「買い」と言える。もちろん、財務諸表の確認も怠らない。流動比率も、インタレスト・カバレッジも、マザーズ上場企業としては申し分ないし、ざっくりと事業価値を計算してみても、企業価値が時価総額を下回っていることが確認できた。株価のチャートを見つつ、売買のタイミングをはかって、成り行きで200万円近い注文を入れたのは、琢郎の自信の現れだった。

ところが、まるで琢郎が買うのを見計らったかのように、バリュープライムの株価は値を下げはじめた。最初は、(オレの読みに間違いはない。株価は、下がれば上がるだけさ)、と強がりを言う余裕があった琢郎だが、さすがに1ヶ月で20%も株価が下落したときには、チャートを見ながら胃が痛くなってきた。(オレは間違っていない。こんな割安株をほっておくなんて、マーケットが間違っているんだ…)。自分を励ますようにつぶやく琢郎だったが、いつのまにか日課にしていた株価のチェックを止めるようになっていった…

そして、今日。

ふと思いついて、インターネットでバリュープライムの株価をチェックしてみたのだ。
秘かな期待はあった。株を買ってから3ヶ月たっていると言うことは、その間に4半期決算もあったはずで、仮に好材料が出ていれば、すくなくとも元値近くまでは戻しているのではないだろうか。これまでのバリュー投資で、そのような例はいくらでもあった。

(たのむ!)

祈るような思いでインターネット証券の画面をクリックした琢郎の目の前に出てきたのは…

  買値から50%の下落

わずか3ヶ月にして、100万円が手元から蒸発したように消えてなくなったことになる。血の気の引いた顔を引きつらせながら、(もう投資なんてコリゴリだよ)という言葉が琢郎の頭の中を駆けめぐっていた。

−「投資再チャレンジ推進会議」 〜もうひとつの処方箋〜

「まあ、そう言うわけでして…」琢郎は、自分の投資の失敗談を語り終えた。

目の前にいるのは、安倍仙吉。とある異業種交流会で知り合って、「トレーダー」と肩書きの付いた名刺に興味を引かれ、食事を一緒にすることにしたのだ。もっとも、ここまで詳しく自分の失敗談を話すつもりはなかった。ついつい舌が滑らかになったのは、仙吉のやや長めの銀髪と白髯がかもしだす、仙人めいた雰囲気のせいかもしれない。

琢郎は、思い切るような口調で続けた。「だから、もう投資は止めようと思っているんですよ。」

「それはもったいないですなぁ…」。仙吉が答える。「岩本さんには釈迦に説法ですが、預貯金では得られないリターンが株にはあるわけですからなぁ…」

(そんなことは分かっている)。琢郎は苦く思う。(だけど、あんな思いはもうコリゴリなんだ)。

そんな琢郎の考えを読みとるかのように、目をのぞき込みながら仙吉は続けた。「もし岩本さんさえ良ければ、ワシのやり方を教えるんで、もう一回投資をしてみませんか?」

「は?」、とまどう琢郎。

「安倍首相ではないですが、『投資再チャレンジ』、ですよ。このまま止めてはもったいない。なに、『手法』と言っても、分散投資を効率よくやるだけなんですがね。」

「分散投資ですかぁ…」。投資再チャレンジ、と聞いて一瞬高ぶりかけた琢郎の心は、あっという間に冷めた。

「えーと、結局、『投資信託を買え』ってことになるんですかねぇ…。コストばっかりかかってリターンは出ないと思うんですけど…」、琢郎は心の中で眉をしかめた。

「投資信託は買いますが、それだけじゃないんですよ。『投資再チャレンジ推進会議』がおすすめするもう一つの処方箋は、もうちょっと体系的になっているんです。」

意味ありげに微笑む仙吉を見ながら、琢郎の気持ちの中には変化が起こり始めていた。(考えてみれば、株を体系的に勉強したことってなかったな、本も手当たり次第に読んだだけだし…)。

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●解説
岩本琢郎さんのストーリー、いかがだったでしょうか?

投資をしている方なら、誰でも覚えがあることでしょうし、実際にこのような体験をして、投資を止めてしまった方も少なからずいるのではないでしょうか。

これは、非常に残念なことです。マネー体験ストーリーの最後の方で仙吉さんが言っているように、長期的に資産を増やすことを考えるならば、株式は預貯金を上回るリターンを生みだすのですから。事実、30年以上の長期間にわたって株を保有すると、その平均年間収益率は10%近くに達する、というレポートもあります。

といっても、株式投資は、値段の上がり下がりが激しいのも事実。そこで、本稿、「投資再チャレンジ推進会議」では、値段の動きを押さえて心安らかに投資する手法として、分散投資をお薦めしたいのです。

「またその話か」と思う前に、ちょっと考えてみてください。「分散投資」と聞くと、どのような分散が思い浮かぶでしょうか?

真っ先に思い浮かぶのは、銘柄の分散ですが、その他にも、市場(国)の分散、購入タイミングの分散、そして、資産の種類の分散(債券、不動産など)、などが考えられます。もっとも、最後の分散は株式投資から外れてしまいますが…

「投資再チャレンジ推進会議」では、これらの分散をすべて網羅する投資法を株式投資のもう一つの処方箋として4回にわたって解説していきます。目標は、預貯金を上回るリターンを得ながら、心安らかに投資をすること、にあります。つまり、一度個別銘柄への投資で「コリゴリだ」と思ってしまった方も、安心して株式投資を再開できる手法です。
と言っていると、琢郎さんの声が聞こえてきそうですね。「そうは言っても、投資信託ってコストが高いんでしょう?」

次章コストを抑えた投資信託の活用法についてお話しします。

(そんな活用法は大人気投資セミナー [1]で!)

[1] http://www.money-college.org/OMMBC.php
[2] http://www.money-college.org/OMMBC.php